2019年3月29日

平成30年度「ひろしま自動車産学官連携推進会議」の活動状況について

~ 広島県内自動車関連産業の発展に向けた産学官の取り組み ~

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2019年3月29日プレスリリース.pdf
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1. ひろしま自動車産学官連携推進会議について
「ひろしま自動車産学官連携推進会議」(以下、ひろ自連)(*1)は、広島地域のものづくり産業発展への強い希望と情熱を持ち、あるべき姿を考え、産業発展につながるイノベーションのてこになることを目指す産学官連携推進団体です。前例にとらわれることなく、本音で語り合いながら定めた「2030年産学官連携ビジョン」(*2)の実現に向けた、具体的な事業を行っています。自動車の独創的技術と文化の聖地を目指して、自動車産業を中心に、広島ならではのモデルをつくり、将来の産学官連携のリードモデルとして、全国や他産業に波及させたいという高い志を抱いています。平成30年度の主な活動成果を紹介します。

2. 平成30年度の主な活動事例 

(1) 内燃機関専門部会
「広島大学-マツダ共同研究講座」の燃焼に関する研究成果が、マツダ株式会社(以下、マツダ)の新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」の開発に適用されました。

(2) モデルベース開発(MBD)(*3)専門部会
「ひろしまデジタルイノベーションセンター(HDIC)」と連携して開発した「MBDプロセス研修」が平成29年度の経済産業省「第四次産業革命スキル習得講座」の認定を取得するなど高く評価され、関連したMBD研修の受講者も増加した結果、広島県内企業によるHDICの利用が拡大しました。

(3) エネルギー専門部会
Well-to-WheelでのCO2排出量評価の認知促進を進めるとともに、エネルギー源そのものをカーボンニュートラルに近づける活動として、ユーグレナ株式会社(以下、ユーグレナ社)との協業により次世代バイオ燃料実証事業を行う「ひろしま”Your Green Fuel”プロジェクト」を発表しました。

(4)内閣府「地方大学・地域産業創生事業」に採択
広島県地方大学・地域産業創生事業推進特別委員会(委員長;広島県知事 湯崎 英彦、事業責任者;マツダ株式会社 代表取締役会長 小飼 雅道)をひろ自連内に設置するとともに、新たに広島大学に「デジタルものづくり教育研究センター」を設立し、社会実装へとつなぐ、革新的多機能複合材料の研究開発とデータ駆動型制御技術やセンシング技術によるスマートシステムの研究開発をスタートしました。

SKYACTIV-X

ひろしま”Your Green Fuel”プロジェクト

地方大学・地域産業創生事業


3. 各専門部会・委員会の目指す姿と活動状況

■内燃機関専門部会
①2030年の目指す姿
・産学官が連携して世界の産業界・学術界を驚かせる研究成果が生み出されている。
・内燃機関の研究・開発を志す人材が集まり、世界をリードする卓越研究員に成長していく。
・世界最高の研究をサポートする研究設備や機器を提供する仕組みや拠点が整備されている。
②活動状況
2030年においても自動車社会の主流は内燃機関であり続けると考え、当専門部会では継続的に内燃機関の革新に取り組んでいます。平成27年に広島大学とマツダで立ち上げた共同研究講座では、内燃機関に関する噴霧、燃焼、排気浄化という一連のプロセスを基礎的に研究しており、研究成果を活用した新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」は、これまでのガソリンエンジンとディーゼルエンジンに対し、さらに優れた環境性能と動力性能の両立を実現しています。また、内燃機関の研究・開発を志す人材が今後益々増えてくることを願い、ひろしま地域における内燃機関に関する出前授業の実施や、内燃機関シンポジウムの後援を行っています。

■モデルベース開発(MBD)専門部会
①2030年の目指す姿
・MBDにより、地域の大学・高専、地域企業、マツダの3者が共創して独創的技術の開発に挑戦し、世界を驚かせる技術を生み出していく。
・この中で、優秀な人材が集まり、大学・高専における学術の発展とサプライヤーの固有技術の進化がドライバーとなり、地域に魅力ある雇用を創出する。
②活動状況
IoTやIndustry4.0など、デジタル技術を活用した技術革新が世界に広がる中で、モデルベース開発は、日本のものづくりが生き残るための切り札とも言える重要技術です。世界に先駆けて、広島でこの技術を確立し地域全体に展開するため、「ひろしまデジタルイノベーションセンター(HDIC)」と連携し、モデルベース開発を実践できる人材育成のための研修を実施しています。これまでの3年間で広島県内企業を中心にのべ2,700名の受講がありました。中でもMBDプロセス研修は経済産業省「第四次産業革命スキル習得講座」の認定を取得しました。

■エネルギー専門部会
①2030年の目指す姿
・日本及び世界のエネルギー供給の安定化及び温室効果ガスの低減への貢献に向けて、自動車用エネルギーとし最も適している液体燃料を、以下を通じて永続させる。
  - 現在の化石燃料(石油)の有効活用の推進
  - 次世代液体燃料(ナフサ利用、再生可能液体燃料)の実用化推進
  - CO2のWell-to-Wheel評価の国内及び国際的な合意形成
・エネルギーの面から将来にわたる内燃機関の存続をサポートする。
②活動状況
2018年6月には、2回目となる“自動車用次世代液体燃料シンポジウム2018”を広島で開催し、1回目を超える263人の、県内外からの幅広い年齢層の参加者の方々に対し、Well-to-Wheelの考え方や次世代液体燃料の重要性について共感いただきました。また、次世代バイオ燃料の地産地消に向けた、ユーグレナ社との協業による広島での実証事業計画「ひろしま”Your Green Fuel”プロジェクト」を発表し、平成31年度の開始に向けて準備を進めています。

■感性専門部会
①2030年の目指す姿
・広島地域における感性開発の産学官プラットフォームがうまく回り、自動車技術を核として、いろいろな産業に感性開発が展開されている。
②活動状況
広島発祥の「感性工学」を発展させて、お客さまの感性につながる新しい商品やサービスを創出するための技術を研究しています。広島大学を中心とした精神的価値が成長する感性イノベーション拠点においては、「視線の行き易さ※」、「ワクワク感~不安感」、「操作による脳の活性化」を可視化することができました。また、地域企業6社との共同研究では「視線の行き易さ分布(リアルタイムサリエンシーマップ)」を車全体から見た個別部位の視点で測定し、開発時の車と自社部品の役割を改めて明らかにしました。
※人の視覚野のメカニズムから目の惹かれやすさをリアルタイムに可視化し定量化する技術

■イノベーション人財育成委員会
①2030年の目指す姿
・あらゆる世代が「夢」を持ち「志」を高めながらチャレンジと成長を持続できる拠点を形成することで、多様なイノベーションが創出され、それを波及させることで地域内外から人々が集まった結果、地域全体が活性化している。
②活動状況
近年、若者世代において、ものづくりや理工系への興味が薄れていく中で、“あらゆる世代で自由で、常識にとらわれない発想”ができ、イノベーションを起こすことができる人財を育成しています。例えば、「『高い志と実践力を育む』インターンシップ」を企画・開発しマツダと地域大学との間で実施してきました。この中で生まれたコンピテンシー面の成長を評価する手法が認められ、地域内の他企業にも展開を開始しました。また、ひろ自連の考え(車は楽しい/理想を描き、志を持つ等)を未来世代に伝えるべく、専門部会と協働の出前授業を地域の小中学校(7校)で実施しました。

■地域企業活性化委員会
①2030年の目指す姿
・中小規模のサプライヤーでも革新的技術やブランド価値の高い製品が次々と生まれ、地域企業の共創地域として認められている。
・共創地域のシンボルとして、産学官が協働する研究開発連携拠点が存在する。
②活動状況
自動車産業は裾野が広く、まさに「地方創生」を左右する業種です。そして、その「地方創生」には自動車関連サプライヤーの活性化が不可欠です。このため、公益財団法人ひろしま産業振興機構(以下、ひろしま産振構)がリーダーとなり地場サプライヤー21社を巻き込んで様々な活動を行っています。例えば、地域企業の若手による「小さなモノ造り研究会」として、「NVH(音振動)性能評価研究」、「軽量フレーム構造研究」などに取り組みました。また「ドアの断熱性能計測」ではカラクリ解明が大きく進み、その結果を自動車技術会に論文として発表しました。

■広島県地方大学・地域産業創生事業推進特別委員会
地方創生のためには、地域の大学と産業界が連携し、魅力的な学びの場と雇用を生み出すことが重要です。そこで、内閣府の地方大学・地域産業創生交付金を活用した「ひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラム」(10ヵ年、最初の5ヵ年で51億円の予算規模)を推進します。このプログラムでは、ものづくり分野の研究者が集積する広島大学を中心に、自動車製造業等の産業界、県内他大学、地域金融機関、行政が連携し、デジタルイノベーションを担う人づくりおよび産学の創発的研究開発に取り組みます。例えば、材料の原子レベルでのシミュレーションを行い、原子構造と材料の持つ機能や性能と結びつけ、高性能で、軽くて、薄くて、そして低価格な防音材、断熱材材料の研究開発などを行います。

4.今後の計画
各委員会・専門部会の活動を継続するとともに、必要に応じて新しい委員会・専門部会の追加と活動範囲の拡大を模索し、テーマによっては、他業種や他地域との連携も視野に入れた展開を図っていきます。

5.参考 
(*1)ひろしま自動車産学官連携推進会議(ひろ自連)の概要
ひろ自連は、平成28年に「イノベーション人財育成委員会」、「地域企業活性化委員会」(旧 地場サプライヤー活性化委員会)、「運営企画委員会」の3つの委員会と広島ならではの「内燃機関専門部会」、「モデルベース開発専門部会」、「感性専門部会」、「エネルギー専門部会」の4つの専門部会を設置し、2030年のありたい姿とロードマップをそれぞれ策定し活動を開始しました。今年度は新たに「広島県地方大学・地域産業創生事業推進特別委員会」を追加設置しました。
■略   称:ひろ自連
■設置時期:平成27年6月11日
■目   的:広島地域の自動車産業を活性化するための旗印として掲げた「2030年産学官連携ビジョン」の着実な実現を図る
■常任団体:公益財団法人ひろしま産業振興機構、マツダ株式会社、国立大学法人広島大学、
中国経済産業局、広島県、広島市
■事 務 局:公益財団法人ひろしま産業振興機構、マツダ株式会社および国立大学法人広島大学に置く
■運営体制:以下に示す

(*2)『2030年産学官連携ビジョン』
・広島を、自動車に関する独創的技術と文化を追い求める人々が集まり、世界を驚かせる技術と文化が持続的に生み出される聖地にする。
・産業・行政・教育が一体になり、イノベーションを起こす人財をあらゆる世代で育成することにより、ものづくりを通じて地域が幸せになる。
・広島ならではの産学官連携モデルが日本における「地方創生」のリードモデルとなり世界のベンチマークとなる。

(*3)モデルベース開発(MBD、 Model Based Development)
商品の機能や性能、あるいは顧客や商品を取り巻く環境などを数理モデルで表現し、計算機によるシミュレーションを徹底的に行うことで、技術のブレークスルーを達成し新しい商品価値を生み出す技術。

【本件に関するお問い合わせ先】 
ひろしま自動車産学官連携推進会議 事務局 
事務局長 小笠原 徹 

マツダ株式会社 R&D技術管理本部
TEL:070-1369-4498  
E-mail:ogasawara.t@mazda.co.jp